世界各地で活躍をする映像作家・さわひらき。室内を飛行機が飛び交う初期の作品《Dwelling》から始まり、記憶を失った男を主人公にフィルム・ノワールを彷彿させる映像美で描かれる《Lineament》にいたるまで、さわの作品世界が幅広く支持を得る理由には、非現実的な光景にもかかわらず、見るものそれぞれの記憶に触れ、懐かしさを呼び起こすからではないでしょうか。
日本で初の作品集となる本書は、2014年に発表された作品を中心に構成されます。スコットランドにある古い天文台で撮影された新作《Lenticular》は、老天文家の姿を通し宇宙との繋がりを描きます。カナダの寒空の下撮影された《Aurora》は、大小様々な表情が迫力をもって展開されます。2012年のアメリカ横断旅行からなる《Souvenir》は、さわの手書きのテキストが加わり、旅の記録が生み出す新しい作品となりました。2002年から2013年までの全映像作品も網羅。一貫して変わらない作品の世界観に、改めて圧倒させられる一冊となりました。
例えば《Lenticular》を制作する際に、さわは「目に見える形で星空を描くことが重要なのではなく、地上からそれらを眺め、星に思いを馳せている自身を描くことが大切だ」と語ります。心地いいテリトリーと境界線。さわひらきの心象風景は私たちの読書体験となって、映像作品とは異なる新しいさわひらきの作品と出会えることでしょう。
さわ ひらき(Hiraki Sawa)
http://hirakisawa.co.uk/
デザイン:近藤一弥
執筆:グラハム・ドンケ(ダンディー・コンテンポラリー・アーツ)
翻訳:野村しのぶ(東京オペラシティ アートギャラリー)
判型:A5判/128ページ+小冊子16ページ/ハードカバー(クロス貼り+箔押し)
テキスト:日本語/英語
ISBN978-4-902943-86-3 C0070
発行日:2014年2月